水墨画を気軽に始めるには|初心者はまずこの道具を揃えよう

「水墨画を始めたいけど
どんな道具を選べばいいの?」

「書道道具でも描けるの?」

「セットものが良いの?
それとも単品で揃えたほうが良いの?」

水墨画の道具はとてもシンプルですが、
いざ始めるとなると、いろいろと
疑問質問が出てくると思います。

特に初心者にとっては
一品一品が高価だ
というイメージがあるようです。

う~ん、
本当にそうでしょうか?

この記事では、
初心者に必要な道具と
選び方のポイントを
書いてみたいと思います。

水墨画を描く為に必要な道具

必須道具は4つ

いわゆる文房四宝と言われる
筆、墨、硯、紙
主な水墨画の道具になります。

その他の道具として
筆洗、絵皿、文鎮、
下敷き、タオル、お手本
が必要になります。

水墨画用筆の選び方

[水墨画]必要な筆とその特長

付立筆(ツケタテフデ)

“長流”“玉蘭”他
沢山の種類があります。

没骨筆(モッコツフデ)とも呼ばれ
輪郭線を使わずに
面の表現を可能にするために
最も適した筆です。

この付立筆1本あれば、
穂先だけを使った線描き
または、根本まで使った
面表現まで多様に使えます。

【特 長】
◎穂が長めで穂先が揃っていること
◎腰が強く復元力があること
◎水、墨の含みが良いこと
◎羊毛・馬毛・狸毛・鹿毛を使用

初心者の方が
慣れないうちから使うと
なかなか扱いづらく、
思った表現が難しいと思います。

慣れるまでは
面描きは付立筆、
線描きは削用筆(或いは面相筆)

と使い分けしたほうが
描きやすいと思います。

削用筆(サクヨウフデ)

硬い線も柔らかい線も
自在に描けます。

線描きにも彩色にも使えて、
表現の幅が広がります。

【特 長】
◎腰が強い
◎穂先がきき、短め
◎水、墨の含みが良い
◎羊毛・イタチ毛を使用

彩色筆

彩色したい場合に使います。
細かい彩色から面の彩色まで
幅広く使えます。
水彩画他の分野でも使われます。

【特 長】
◎墨や顔彩の含みが良い
◎穂先がきく
◎弾力がある
◎羊毛・馬毛・鹿毛・狸毛など

お手入れによってはどうしても
色が取り切れず残ってしまうので、
色が混じらないよう
色ごとに筆を変えるのが
ベターではあります。

面相筆(メンソウフデ)

線描きのための筆で、
非常に細い穂先を持ってます。
人形や歌舞伎役者の面相を
描くところからこの名がつきました。

【特 長】
◎穂先が非常に細く長い
◎穂先のまとまりが良い

日本画はもちろん、
水彩画、かな文字、写経など
あらゆる分野で使われています。

その他に線描き筆として
骨書・則妙・如水
種類があります。
用途に合わせて
使い分けします。

いきなり専門店に入って
選ぼうと思っても
種類が豊富過ぎて困難です。

上記の筆の種類に絞ると
選びやすいでしょう。

お店によっては
試し書き出来るところが
ありますので、描き心地を
確認するのも良いと思います。

揃えたい筆としては

付立筆を中か大1~2本
削用筆を小か中1本
彩色筆を中1本

[水墨画]上質筆を選ぶ理由とは?

Q:「良い筆の(必須)条件は?」
A: ①穂先がまとまっていること
  ②弾力があること
    百均の筆は戻りません
  ③耐久性があること

安い筆は①~③の逆で
墨を付ける前から抜け毛があります。

お稽古中にそのような状態に
なって作業が思うように
進まなくなったら!?
どうでしょうか?

水墨画の技法を習得する
どころではありませんね。
上達もままなりません。

上質な毛の筆
最初は扱い辛く
感じるものですが、

初心者でも
筆を持つことで
描けるように

導いてくれます。

最初が肝心!

上記のポイントを
しっかりチェックして
選びましょう。

Q:「何本も必要なの?」
A: 初心者のうちから
  何本も持たなくても大丈夫です。

私も長年、愛用の一本で
作画しています。

適切なお手入れ
欠かさなければ一生ものです。

少し描くことに慣れてきたら
自分に合った道具を選ぶことも
楽しみの一つになりますよね。

その時には、予算に合わせて
好みのものを足していけば
良いと思います。

道具のメンテナンス、筆の扱い方はコチラ⇩

水墨画初心者の為の道具のメンテナンス|筆を長持ちさせる方法

水墨画の為の墨の選び方

油煙墨
松煙墨
の2種類があります。
現在一般的なのは油煙墨です。

[水墨画]艶やか油煙墨

油煙墨とは
菜種油(最上)などの植物油を
燃やした煤で作ります。
茶色みがかった深い黒色です。

粒子が細かく均一なため
艶と光沢があります。
墨の磨り口を見ると
松煙墨との違いがわかります。

[水墨画]色幅と深みの松煙墨

松煙墨(青墨ともいわれる)とは
松の皮や枝を燃やした煤で作ります。
もっとも歴史の古い製造方法です。

粒子が大きく不均衡なため
光沢はあまりありません。
年月がたつほど
青みがかった黒色になります。

特ににじみや淡墨が美しいので、
水墨画向きです。

以前、天然の松だけで作られた
松煙墨を買い求めた時には、
材料も限られ製造も大変で
貴重な墨になっている、と
専門店の方の話しでした。

[水墨画]新墨と古墨について

もうひとつ
墨には分け方があります。

製造されてからの年月が
浅いか古いかで分かれますが、
専門家でもはっきりした
分類は難しいようです。

作られて5年までの墨を
新墨といいます。
この期間の墨は、
水分を多く含み安定してません。

作られて10年以上経過した墨を
古墨といいます。

描くために必要な条件が
揃った状態になっています。

これには最もいい状態で
保存されている、という
条件つきではあります。

良い状態で保存されれば
何百年は持つそうです。

初心者にとって
この分類はさらに
難しくなりますから、
あまり意識しなくても
大丈夫です。

[水墨画]初心者向けの墨

最も意識したいのは
① 墨のおりがよい
② 濃淡がきれいに表現できる
③ 適度な墨ののび

墨もまた
様々な種類や大きさ他
選びきれないぐらいです。

専門店で詳しいスタッフの方に
アドバイスをもらって
決めるのが良いと思います。

[水墨画]初心者が抱く疑問質問

Q:「書道用の墨は使えるの?」
A: 使えます。

水墨画の場合は淡墨にしたときに
きれいに発色するのが理想です。
その点でクリアしていれば
書道用でも問題ないと思います。

あえて違いはというと、
書道用よりも水墨画用の方が
膠の量が多く含まれている
ということだそうです。

販売店では購入者が
分かりやすいように
“水墨画用”“書道用”
記してますが、あくまで
目安だと思って良いと思います。

 

Q:「墨の代わりに墨汁は使えますか?」
A: 練習用で使うならば
 全く問題ありません。

 作品として描く場合は
 表具の問題があります。というのは、

墨汁は墨が乾いてからも
 膠が弱いために
 表具する段階で
 滲んでしまうからです。

 必ず固形墨を使用してください。

知っておこう!固形墨と墨液のこと
⇩ ⇩ ⇩

【水墨画初心者】描くために知っておこう!固形墨と墨液のこと

 

作品を描いていく段階では
固形墨を使用して
美しい墨の濃淡
堪能たんのうしてください。

初心者の為の道具のメンテナンス、
墨のことと扱い方はコチラ⇩

水墨画初心者の為の道具のメンテナンス|墨のこと・硯のこと

水墨画の為の硯の選び方⑴

国産のものと中国産のものがあります。

中国産のものが種類も多く
上質とされています。

中でも端渓硯(たんけいけん)は
人気で価格も高めです。
高価なものは鑑賞用、
愛玩用のものがあります。

<硯の選び方ポイント>

  1. :どっしりとした重み、バランス
  2. 鋒鋩:墨堂(おか)を撫でてみる。
    ごく細かな凹凸で赤ちゃん肌
  3. 模様:美しいだけでなく、短時間で
    良い墨が磨れる
  4. 保水力:磨った墨液が直ぐに乾かず
    保たれること
  5. 離墨:使用後の墨が落ちやすい

初心者の練習用硯としては
羅紋硯 五三寸 (15×9センチ)
手頃なところです。
あくまで練習向きです。

“羅紋硯”は廉価で購入でき、
墨もよくおりて練習用には
ぴったりですが、
作品用としてはお勧めできません

磨墨を妨げたり、おかが減ってくる
ものもあるからです。

水墨画の為の硯の選び方⑵

[水墨画]墨の鋒鋩

硯の表面には“鋒鋩(ほうぼう)”
と呼ばれる細かな突起があります。
これがおろし金のような役目をして
墨を磨ることができるのです。

この鋒鋩が多いほど良い硯と言えます。

中国産は日本産に比べて
鋒鋩が多いそうです。

[水墨画]条件を満たした硯の良さ

水墨画を描くからには
墨色が美しいことに限ります。

硯の良し悪しが、墨色の良し悪しを
左右しますので
あまり廉価なものは
オススメしません。

硯もまた良いものは一生ものです。

専門店で相談の上、
予算に合わせて選びましょう。

初心者の為の道具のメンテナンス、
硯のことと扱い方はコチラ⇩

水墨画初心者の為の道具のメンテナンス|墨のこと・硯のこと

水墨画用の紙の種類

[水墨画]滲む紙、滲まない紙

にじむ紙、にじまない紙に分かれます。

【中国製(本画宣)】

中国製の紙の原料は、
稲藁と青檀(せいだん)の樹皮

中国製はよく滲みます。
厚みによっても
滲み方が違って
それぞれに美しいです。

代表的な画宣紙に
「紅星牌」「蘭亭牌」
などがあります。

【日本製(和画仙)】

日本製の紙の原料は
楮、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)

中国製の紙と比べて
にじみは少ないですが、
發墨がとてもよいです。
代表的な画仙紙に
甲州画仙、因州画仙
があります。

麻紙
麻を原料とした麻紙(まし)
水墨画ではよく使われます。
画仙紙とはまた違った
にじみの変化が美しい紙です。

墨の重ね描きが可能で
筆跡があまりつきません。

少々高価なので、
初心者のうちは
不経済かもしれません。

運筆の練習時は
出来るだけ気兼ねなく
沢山使える方が良いので書道用半紙など
比較的安価で枚数も多い
練習出来る紙
選びましょう。淡墨が綺麗に出れば
なお良いですね。

[水墨画]機械漉き、手漉き

【手漉き】
職人さんが1枚1枚
手作業で仕上げます。

沢山ある工程ごとに
たっぷり手間暇がかかっており、
値段も高めですが、

職人不足、原料不足などに加えて
需要が減少しているため
その工程にも変化が
出てきているようです。

【機械漉き】
大型の機械を使って
大量の和紙を均一に
漉いていきます。

原料も木材パルブなど
大量生産に耐えうるものを
使って作られてます。

手漉きよりも安価ですが、
決して品質が悪いわけでは
ありません。

必ずしも手漉きだから
良い効果、良い結果が出る
というわけではなさそうです。

練習では調墨、運筆を意識して
少し安価な紙を選び、
本番では少し背伸びして
新たな紙質に挑戦されても
良いですね。

初心者は筆の運びが遅いので、
にじみ止め加工された紙や
楮や三椏紙などの滲みが
少ない紙を
選びましょう。

このメビウスは和紙を張り合わせた
厚めの紙になります。
作品用であれば裏打ちが必要かも
しれませんが練習用であれば、
シワやタルミを気にせずに
描きやすい和紙です。

あくまで宣紙(中国紙)、
和紙を選ぶ基準を書きましたが、
和紙はやっぱり難しそう。
和紙にこだわらず
何でも使って試してみたい
というかたもいると思います。

最近ではプロの作家さんでも
水彩紙版画紙を使う方が増えています。
和紙とは違った滲み方が
面白い効果を出しているようです。

私も研究してまた別の機会に
そのへんのところを
書いてみたいと思います。

[水墨画]その他の必要道具

筆洗

・磁器製
代用品でもOKですが、
磁器製は色が染みこまずに使えます。

絵皿

・陶器製
白色であること
・代用品でもOK
・2~3枚は必要
・プラスチックは避けましょう
・直径8.5㎝~15.5㎝

下敷き
白色のフェルト
・厚み2㎜ぐらい
・紙より大きいサイズを選ぶ
50×60㎝ 白2㎜ (オススメの厚み)

 

文鎮

しっかり紙を押さえる
ことが出来れば代用品でOK

タオル
吸湿のよいもの
筆の水切りや墨量の調節に使用

筆置き

箸置き他、代用品OK

水差し

代用品OK

[水墨画]セットものはどうなの?

Q:「初心者なので
 セットものが悩まなくていい?」

A: 実用的な道具の
 必要最小限セットであれば
 良いと思います。

中には顔彩や写経セットなど
最初から使わないものが
入っていたり、

硯や絵皿が小さすぎたり、

実際に使い始めると
目的に合わないものが
入っていたりします。

実用的なセットもので
オススメなのは、

出来ればセットであっても
実際に専門店で確認して
見られることをお勧めします。

[水墨画]良い道具との出会いから

初心者だから廉価なものから始めたい?

良い道具とは決して高価な
ものということではありません。

ある程度の値段の道具類は
水墨画を描く為の職人技
詰まったものです。

初心者だからこそ安心して
道具にまかせて描かせてもらう。
そんなつもりで練習していけば
自然と馴染んでくると思います。

専門店では目的と予算を伝えて
お財布と相談しながら選びましょう。

こちらの画像も基本の道具が
紹介されています。⇩ ⇩ ⇩

[水墨画]入門書・お手本

初心者向けの入門書は
沢山出版されています。

どの入門書でも
基礎知識のページ
ほぼ同じ内容で
違いはないと思います。

入門書の中に
作例カット集
挿入されているものが
おススメです。

その中で練習してみたい
画があれば、拡大コピー
お手本として使用しましょう。

練習する紙の横に置いたとき、
邪魔にならなくて見やすいです。

まとめ

今回は、初心者の為の
道具の選び方のポイントを書いてみました。

①専門店で相談しながら 目的に合った道具を選ぶこと
②道具の機能をある程度知って 道具に描かせてもらうつもりで選ぼう
③代用できるものは代用品でOK

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はじめまして 水墨画作家のCHIKAです。水墨画を独学で学んだ経験を活かし、全くの独学でも楽しめる方法を日々trial and errorで実践中。“変化・継承する素晴らしさを自然から学びたい”思いで里山暮らしを体験中。野鳥好き・猫好き。アクリル画にも挑戦中。京都生まれ