こんにちは
水墨画作家のCHIKAです。
今回は筆を上手に使って
少しでも長持ちさせる
方法について
書いてみようと思います。
目次
[水墨画]道具メンテ/墨だまり
[水墨画の筆]高級筆でも
初心者の時から
しっかりお手入れをすれば
お手入れを怠ったものと比べて
おそらく何十年も差が
生じると思います。
最近、こんな話を耳にしました。
その方は熊野筆を
プレゼントされました。
ところがあまりにも
お手入れが不十分だったため
わずか10年足らずで
駄目にしてしまいました。
なんとももったいない!!
毎日激しく使い
続けたのであれば
寿命だったかも
しれませんが、
大事な筆だからと
たまにしか使わなかった
そうです。
高価な筆とされる多くは
毛質が特に優れている
羊毛筆と言われてます。
メンテナンスが良ければ
一生もので、
使い込むほどに
使いやすくなるそうです。
そのことを知って
さらに残念に思いますが、
でもたまにしか使わなかったのに
どうして駄目になったんでしょう?
[水墨画の筆]駄目になる原因とは?
ほとんどの場合は
使った後の手入れが問題です。
洗ったつもりでも
墨が残ってしまい
“墨だまり”ができてしまう。
それが原因で
毛が切れたり、抜けたり、
最終的に穂が割れて
しまうようです。
熊野筆を駄目にした
先ほどの場合は
まさにこのケース。
でも他人事ではありません。
[水墨画の筆]洗い方のポイント
水墨画や書の筆は
水や墨の含みを良くするため
穂がたっぷりしています。
その分、洗い方に注意しないと
どうしても墨だまりが
出来てしまいます。
しっかり洗わなければ
いけない箇所は、
根本の付け根の部分、
穂の中心軸部分です。
穂をつまんで
揉みほぐすようにして
ぬるま湯(30℃くらい)で
しっかり洗い流します。
墨はどんどん出てきますから
ため洗いでも良いでしょう。
墨色が出なくなるまで
洗うのが目安です。
[水墨画]道具メンテ/筆のキャップ
もっとも知らずに
やってしまうケースです。
ほとんどの筆には購入時に
透明のキャップが付いています。
これは店頭に陳列の際、
穂先を守るためのものです。
それ以外の使い道は
ありません。
購入後、使い始めたら
すぐに外して捨てて
しまいましょう。
筆を洗った後、
乾かないうちに
キャップをはめる・・・
この行為が最も筆の
寿命を縮めることになります。
湿気がこもって
腐敗してしまうのです。
絶対にやらないよう
気を付けましょう!!
[水墨画]道具メンテ/筆は水嫌い
筆を筆洗で洗ったとき
たとえ短時間でも
つけっぱなしにしないよう
気を付けましょう。
ついうっかり
やってしまいがちですが
穂を痛める原因になります。
[水墨画]道具メンテ/硯のおか
硯には鋒鋩ほうぼうという
突起が細かくついています。
そこに墨をつけようとして
毛をこすりつけると
鋒鋩によって
毛先が擦り切れてしまいます。
これも気づかずに
やってしまいがちです。
気をつけましょう。
[水墨画]道具メンテ/毛抜けの原因
毛抜けの毛が
“芯にある長い毛”である場合、
根元の締め方が緩いのかも
しれません。
これは廉価な筆に見られる
パターンです。
一度抜け始めると
抜け続けることになります。
メーカーに修理を
依頼するなりして
使用はやめましょう。
[水墨画]道具メンテ/トラブル
[水墨画の筆]穂首が抜ける
穂首がすっぽり抜けてしまう
ケースもあります。
これは製造中の
接着剤の付け方に
問題があるようです。
接着剤が適切であれば
付け直して軸に
差し込めばOKです。
数か月前、同じメーカーで数本の
削用筆をネット購入しました。
とても使いやすく穂先のまとまりも
良いので気に入って使っていました。
ところが先日、大事な箇所を
描き込んでいる時にバッサリ
穂首が落ちてしまいました!!
この際と思いメーカーに
問い合わせて確認しました。
メーカーの方によると
穂首の根元部分に
速乾の透明ボンドを付けて筆管に戻し、
乾かすとよいのだそうです。
自分で修理するのはちょっと心配。
という場合はもちろん
専門家に修理してもらえますが、
専門家の方も同じ修理方法だそうです。
穂首が落ちてしまった場合は、
試してみてください。
[水墨画の筆]穂が固まる
筆を使ったあとの
始末が悪いと
穂が膠分で固まってしまいます。
その時はぬるま湯につけて
自然にほぐれるのを待ちます。
ほぐれてきたら
丁寧に洗い流しましょう。
[水墨画の筆]虫もつきます
天然の動物の毛を
使っている筆には
虫もつきます。
調べてみると
羊毛、羽毛に付着し食害する
ヒメマルカツオブシムシ
という虫のようです。
なかなかやっかいな虫なので
衣類同様、保管する場合は
防虫剤を入れておきましょう。
一度しっかり根元まで
墨をつけておくと
虫が寄り付かないと
いわれるので、
新しく購入した場合には
墨を付けてそのあと
しっかり洗い、
風通しの良い所で
吊るしておきましょう。
[水墨画]道具メンテ/筆の洗い方
筆の洗い方の復習です。
30℃~40℃のぬるま湯で
流し洗いか溜め洗い
どちらでも良いので、
根本部分を優しく
もみほぐすつもりで
揉み洗いします。
洗剤は使わないように
しましょう。
どうしても使う場合は
香料や添加物のないものを
使いましょう。
洗っても洗っても
どんどん根元の付け根から
墨が流れ出てきますが、
出来るだけ根気強く
墨を取り去っておきましょう。
目安は墨色が
出なくなるまでです。
「筆シャン」は
筆専用のシャンプーです。
『洗剤では洗わないで』と
書きましたが、こちらは
天然由来の植物酸で、
筆が柔らかくなります。
泡で筆の根元部分から
穂先まで付着した墨や
絵具を除去してくれます。
毎回のお手入れが大変!
と思われたら試して
みてください。
洗い終えたら
絞るように水分を
取り除いておきましょう。
指先できれいに
穂先を整えておきます。
あとは自然乾燥です。
筆を吊るして
直射日光の当たらない
ところで完全に
乾かしましょう。
[水墨画の筆]墨液は筆を痛める?
墨液は2種類あります。
膠使用のものと
合成糊剤使用のものと
膠使用の墨液は多量の塩分が
使われています。
樹脂製のものは弾力のある
皮膜をつくるため一度乾くと
元に戻すのが大変です。
どちらも膠使用の固形墨同様、
使用後はしっかり洗いましょう。
乾燥も忘れずに。
[水墨画]道具メンテ/長期保管
完全に乾燥させたあとは
密閉容器に防虫剤と乾燥剤を
入れて保存しましょう。
[水墨画]道具メンテ/筆の寿命は?
羊毛筆はメンテナンスが良ければ
一生ものだと言われます。
使い込むほどに
使い勝手が良くなるようです。
トラブルなく
使い続けるベストな
方法としては
同じ筆を2~3本用意し、
完全に乾かしながら
交代に使うと
少しでも長持ち
させることが出来ます。
[水墨画]道具メンテ/化粧道具も
水墨画用の筆から
話が逸れますが、
最初に熊野筆のお話しを
書きましたので、もう一つ
とっても気になっているのが
化粧道具として
熊野筆の愛用者が
増えているということです。
役割の違いから
穂の配合には当然
違いがあると思いますが、
動物の種類としては
山羊毛、馬毛、狸毛、栗鼠
猫毛、鼬毛、etc
とほぼ同じです。
墨と皮脂や油よこれの
違いはありますが、
ぬるま湯で揉み洗い
⇩
自然乾燥
というお手入れ方法は
同じです。
大変贅沢な化粧道具ですが
肌に触る心地よさは
格別のようです。
化粧道具としては
使ったことありませんが、
日頃、毛筆を触っていると
肌に心地よいのは
実感しているところです。
持たれている方は
是非、正しくお手入れして
長持ちさせたいところですね。
[水墨画]道具メンテ/筆供養
役目を終えた筆を
供養しましょう。
筆づくりのために
毛を提供することに
なってしまった
動物の供養にもなります。
また、これからの
筆の上達への
祈願が出来ます。
筆供養や筆まつりは
各地で執り行われています。
初心者の為の道具の選び方はコチラ⇩
まとめ
日頃の丁寧なお手入れで
筆の寿命がぐんと延びます。
こまめなお手入れを
続けていきましょう。
②使用後の筆はぬるま湯で墨を落とすこと
③完全に乾かし風通しの良い日陰に干すこと