[水墨画の技法]初心者のためのわかりやすい基本的な用語の解説

こんにちは
水墨画家のCHIKAです。

独学や初心者の方は
参考書を手本に
練習されることと思います。

その時まず説明用語がいまいち
よくわからなくて進みづらい、
ということはありませんか?

今回はもう一度
用語の面から
水墨画の技法を
見てみたいと思います。

技ではなく個性!

技法の事を書くのに
矛盾した言い方ですが(笑)
アナログ絵画だからこその
個性の際立つ描き方
魅了されること間違いなしです。

是非、少しずつ実践で
確認してみてくださいネ。

目次

[水墨画の技法]用語の理解から


初心者の頃は
用語はあくまで
体が覚えるまでの
便宜上だとの理解で
十分だと思います。

水墨画の用語は書と同じ。
難しく捉えられるのは、
元々が中国語だったからです。

まだまだ耳慣れない
用法が沢山あります。

技法を本格的に
学ぶのでなければ、
このブログでご紹介した
技法以上に知る必要は
ほとんどないと思います。

つまり、これだけ知っていれば
初心者の方は十分描くことが
出来るということですね。

是非水墨画に適した道具で
挑戦してみてください。

「こういうことか!!」と
より描くことが
楽しくなることでしょう。

そうなれば用語の持つ
意味合いも感覚的に
理解出来ることと思います。

ではそれぞれに分けて
みていきましょう。

[水墨画の技法]筆の持ち方の用語


筆を持つ機会が
ほとんどない現代です。

筆と鉛筆や筆ペンでは
持ち方も力の入れ方も
全く違います。

それでも基本の筆使いを
意識していれば、
手と筆が勝手に基本形を
取れるようになってきます。

なぜならそのほうが
断然楽に運筆出来るからです。

[水墨画の技法]単鈎法とは


単鈎法たんこうほう
親指と人差し指で
筆管を支え、中指と薬指で
支える持ち方。

細かく筆を動かすのに
良い持ち方です。

[水墨画の技法]双鈎法とは


双鈎法そうこうほう
親指、人差し指、中指ではさみ、
薬指で支える。

大きな画を描く時には
筆が安定する持ち方。

[水墨画の技法]腕の構え方用語


腕の構え方にもそれぞれ
適した方法があります。

[水墨画の技法]懸腕法とは


懸腕法けんわんほう
体から肘を離し、
筆を持った方の腕を
紙から離し紙と平行に
浮かせて描く方法。

大きな運筆が可能です

[水墨画の技法]提腕法とは


提腕法ていわんほう
筆を持った方の手首を
机の上に軽くのせて描く方法。

細部や小品を描く時に
適している構え方です

[水墨画の技法]枕腕法とは


枕腕法ちんわんほう
筆を持っている方の
手首の下に、空いている方の
手を添える構え方です。

小品や細部の描写の時に
安定する方法です。

[水墨画の技法]用筆とは


実際に描く際の筆遣いを
用筆と言います。

運筆(筆の運び方、動かし方)
とも言います。

直筆、側筆、逆筆が
基本の3つになります。

[水墨画の技法]直筆とは

穂先が筆の動く方向と
逆の方向に向きます。
穂先が線の中央を通るようにする方法

[水墨画の技法]側筆とは

筆を斜めに傾けて
筆の腹を使って描く方法。

傾けて描くことによって
濃淡が描けるので、
もっともよく使う用筆法
でもあります。

[水墨画の技法]逆筆とは

筆をやや斜めに倒し
押し出すように描く方法

[水墨画の技法]その他の用筆語

比較的よく使う用筆法が
次の二つです。

擢筆てきひつ
穂で紙を叩くようにして
点を打つ方法です。
花や点苔はこの方法。

刷筆さっぴつ
穂の腹を使って
こするように描きます。
動物の毛描き他は
この方法になります。

[水墨画の技法]用筆実践編


ここまでで言えることは、
筆は穂先だけを使うのではなく、
あらゆる部分を使って
描くことが出来る、ということです。

少し逸れますが、
100均の筆では穂先は
使えても水墨画の
多彩な筆遣いには
不向きであることは
ハッキリ言えそうですね。

それでは用筆の解説に沿って
実践で確認してみましょう。

[水墨画の技法]直筆とは


上の画像はすべて
直筆で描きました。

直筆とは
「穂先が筆の動く方向と
逆の方向に向き、穂先が線の中央を
通るようにする方法」です。

[水墨画の技法]側筆とは


側筆とは
「筆を斜めに傾けて
筆の腹を使って描く方法」

筆に墨の濃淡を含ませて
側筆で描くと
物の立体感他を一筆で
表現することが出来ます。

最も水墨画らしい表現で
よく使う用筆法です。

[水墨画の技法]逆筆とは


逆筆とは
「筆をやや斜めに倒し
押し出すように描く方法」

円を描いたり
花や葉っぱを描く時、
逆方向に筆を動かして
描く場合があります。

[水墨画の技法]用墨とは


姿勢、運筆がわかったところで
次に用墨について
解説したいと思います。

用墨とは、墨の扱い方です。

墨汁では美しいグラデーションは
望めませんので固形墨
使って試してみてくださいね。

ここで考え方として
墨の濃淡を
彩色画と比較してみましょう。

水墨画で重要なのは
墨の濃さ(グラデーション)です。

この濃さの違いが
彩色画で言えば色の違いに
当たります。

グラデーションを駆使することで
物体の濃淡だけでなく、
軽重、明暗、深浅等が
表現出来ます。

[水墨画の技法]墨の濃淡

墨の濃淡は濃い薄いの
色の調節になります。

日本では「墨に五彩あり」とか
「墨に七彩あり」と言います。

中国では「五墨六彩」と言って
墨の濃淡を表現するそうです。

墨の濃淡には
次のような種類と名称が
あります。

「五墨」とは墨の
焦、濃、淡、干、湿で、
「六彩」とは
黒・白、干・湿、濃・淡の関係です。

すなわち、

墨の濃さ(焦、濃、淡)、
水の分量(干・湿)、
明暗と色彩(黒・白)、

の調和と対比により、
水墨画は構成されていることを
五墨六彩」という言葉で
表現しているのです。

《引用:「水墨画ハンドブック」より/馬 驍》

<濃淡を作る方法>

  1. 限界までの濃墨を作る
  2. ➀で磨った濃墨を
    水で調節して必要な濃淡を作る
  3. 水で調節するときは
    筆に取った濃墨を絵皿で
    振るように馴染ませる
  4. 違った濃淡を表現したい時は
    その都度、調墨しなおす

[水墨画の技法]墨の潤渇

墨の潤渇は水の多い少ないで、
にじみぼかしを表現するか、
乾いて濃い表現をするかの
違いを生みます。

[水墨画の技法]用墨実践編


墨の五彩、六彩を参考に
実際に墨を作ってみましょう。

水墨画では濃墨より
淡墨を大切に表現します。

これらの墨の濃淡の変化を
効果的に表現出来たら・・・
素敵な作品がどんどん
生まれそうですよね。

[水墨画の技法]墨技と筆技


ここからは技法について
その用語とともに解説
していきたいと思います。

  • 墨の魅せる技
  • 筆を使った技
  • 描き方
    の3つに分けてみます。

用語名で難しく感じる場合は、
実際にどんな方法なのかを
筆と練習用の紙を使って
確認してみる方法を
オススメします

用語がわからなくっても
自然と筆で表現出来ていた!
ってこともあります。

[水墨画の技法]墨技の種類

① 三墨法
② 破墨法
③ 撥墨法
④ 積墨法
⑤ たらし込み法

[水墨画の技法]筆技の種類

ア.減筆法
イ.先隈
ウ.元隈
エ.片隈
オ.両隈
カ.潤筆
キ.渇筆
ク.割り筆

それぞれの説明、実践法は
こちらの記事からもどうぞ
↓  ↓  ↓

【水墨画】を独学で楽しむために|まず技法を知ることは上達の第一歩!

[水墨画の技法]二大描法

(1) 鉤勒法
(2) 没骨法

[水墨画の技法]調墨とは

それぞれの墨技の前に
よく使う大切な用語で
調墨ちょうぼく があります。

これは一筆に墨の濃淡を
含ませることを言います。

どう含ませるか?
それが技になってきますね。

では墨技、筆技を一つずつ
みていきましょう。

[水墨画の技法]①三墨法とは


三墨法さんぼくほう

水墨画の基本中の基本で
もっとも水墨画らしい
技法なのが三墨法です。

三墨法とは
一筆の中に墨の
グラデーションを
作る方法のことです。

穂に濃墨、中墨、淡墨を
順番に含ませます。
含ませ方によって
グラデーションにも
変化が生まれ、
水墨画らしい墨色の
変化が楽しめます。

[水墨画の技法]②破墨法とは


破墨法はぼくほう

先に描いた墨線(墨面)に
後から濃さと水分量の違う
墨を重ねます。

墨の調子が変化します。
それによって
表情をつくる方法です。

ものの質感が表現出来ます。

[水墨画の技法]③撥墨法とは

引用:「破墨山水図」雪舟/ウィキペディアより

撥墨法はつぼくほう

墨をそそいだり
撥ね散らかすなど
偶然性を期待した方法です。

出来た墨の形から
山や雲、岩の形に見立てて
描きだすことを言います。

水墨画ならではの
手法と言えます。

[水墨画の技法]④積墨法とは


積墨法せきぼくほう

墨を重ねる表現方法です。
薄墨を丁寧に重ねていきます。

何度も重ねることで
絵に厚みが出来て
ものの質感、立体感
奥行きが表現出来ます。

滲みの少ない紙が適しています。

[水墨画の技法]⑤たらし込みとは

出典:《琳派》しこうしゃ

たらし込み

俵屋宗達の創案で、
琳派絵師たちが用いた
代表的な描法です。

にじまない紙を使います。

濡らした紙が乾かないうちに
他の濃さの墨を置いて
にじませる“ぼかし”の技法です。

日本画ではよく使われます。

[水墨画の技法]ア.減筆法とは

引用:ウィキペディアより 「李白吟行図」 梁楷

減筆法げんぴつほう

少ない筆数で対象物を
描き出す方法です。

線の肥痩や強弱、
濃淡、速度の変化など
線や面の表情を
多彩にすることで、
その効果が増大します。

少し高度な技法ですが、
細かく描かないことで
表現するのが水墨画です。

技法の中ではよく使われる
方法でもあります。

[水墨画の技法]イ.先隈とは

先隈さきくま

穂の先端に濃墨をつけて描きます。

先を尖らせた先隈⇩

先を丸く入れた先隈⇩

[水墨画の技法]ウ.元隈とは

元隈もとくま

筆の根元に濃墨を
つけて描く方法です。

先隈とは逆の方法で、
穂の先端についた濃墨は
拭き取るか流してしまいます。

穂先の濃墨を洗ったあとは
水が滴るくらいに
含ませておくのがポイント。

[水墨画の技法]エ.片隈とは

片隈かたくま

三墨法を作るのと
同じ方法です。

筆の片側を濃くすることで
立体感や奥行きを
表現します。

[水墨画の技法]オ.両隈とは

両隈りょうぐま

筆跡の両側が濃墨になることで
対象物の輪郭を
強調して描く方法。

横から見た筆の状態
表と裏をぺたんこにするつもりで⇩

上からみた状態
この両サイドに濃墨をつける⇩

[水墨画の技法]カ.潤筆とは

潤筆じゅんぴつ

穂に含ませる水の量を多くして
ゆっくり運筆する方法

[水墨画の技法]キ.渇筆

渇筆かっぴつ

穂に含ませる水の量を
少なくして素早く運筆する

[水墨画の技法]ク.割り筆とは

割り筆わりふで

水量を少なめにして
穂先を捻ってバラバラにして
素早い運筆で表現します。

動物の毛描きや松葉などを
表現したいときに使います。
《破筆》とも言います。

[水墨画の技法](1)鉤勒法とは

鈎勒法こうろくほう

線描法とも言います。

輪郭線を描く方法で、
主に直筆を使って
線のみで表現します。

[水墨画の技法](2)没骨法とは

没骨法もっこつほう

付立法とも言います。

輪郭線を描かない方法です。
側筆が中心の描き方になります。

墨の濃淡、潤渇の変化で
対象の質感、量感を同時に
表現する方法です。

まとめ

いかがでしたか?

今回は水墨画の基本的な
用語を順にみていきました。

呼称は難しそうですが
実践すれば自然に形に
なっていることもあります。

「使いこなす」と考えると
なかなか先の長いお話になります。

少しずつお手本を観ながらでも
「この線、メッチャ上手くいった!!」
と自画自賛して
達成感を感じながら
進んでいってください。

用語に惑わされることなく
筆に任せてチャレンジして
みてくださいね。

1.水墨画実践時の用語の説明
2.効果的な技法の使い方
3.用語がわかれば実践!

ABOUT US

はじめまして 水墨画作家のCHIKAです。水墨画を独学で学んだ経験を活かし、全くの独学でも楽しめる方法を日々trial and errorで実践中。“変化・継承する素晴らしさを自然から学びたい”思いで里山暮らしを体験中。野鳥好き・猫好き。アクリル画にも挑戦中。京都生まれ