こんにちは
水墨画家のCHIKAです。
独学や初心者の方は
参考書を手本に
練習されることと思います。
その時まず説明用語がいまいち
よくわからなくて進みづらい、
ということはありませんか?
今回はもう一度
用語の面から
水墨画の技法を
見てみたいと思います。
技ではなく個性!
技法の事を書くのに
矛盾した言い方ですが(笑)
アナログ絵画だからこその
個性の際立つ描き方に
魅了されること間違いなしです。
是非、少しずつ実践で
確認してみてくださいネ。
目次
- 0.1 [水墨画の技法]用語の理解から
- 0.2 [水墨画の技法]筆の持ち方の用語
- 0.3 [水墨画の技法]腕の構え方用語
- 0.4 [水墨画の技法]用筆とは
- 0.5 [水墨画の技法]用筆実践編
- 0.6 [水墨画の技法]用墨とは
- 0.7 [水墨画の技法]用墨実践編
- 0.8 [水墨画の技法]墨技と筆技
- 0.9 [水墨画の技法]調墨とは
- 0.10 [水墨画の技法]①三墨法とは
- 0.11 [水墨画の技法]②破墨法とは
- 0.12 [水墨画の技法]③撥墨法とは
- 0.13 [水墨画の技法]④積墨法とは
- 0.14 [水墨画の技法]⑤たらし込みとは
- 0.15 [水墨画の技法]ア.減筆法とは
- 0.16 [水墨画の技法]イ.先隈とは
- 0.17 [水墨画の技法]ウ.元隈とは
- 0.18 [水墨画の技法]エ.片隈とは
- 0.19 [水墨画の技法]オ.両隈とは
- 0.20 [水墨画の技法]カ.潤筆とは
- 0.21 [水墨画の技法]キ.渇筆
- 0.22 [水墨画の技法]ク.割り筆とは
- 0.23 [水墨画の技法](1)鉤勒法とは
- 0.24 [水墨画の技法](2)没骨法とは
- 0.25 まとめ
- 1 新着情報
[水墨画の技法]用語の理解から
初心者の頃は
用語はあくまで
体が覚えるまでの
便宜上だとの理解で
十分だと思います。
水墨画の用語は書と同じ。
難しく捉えられるのは、
元々が中国語だったからです。
まだまだ耳慣れない
用法が沢山あります。
技法を本格的に
学ぶのでなければ、
このブログでご紹介した
技法以上に知る必要は
ほとんどないと思います。
つまり、これだけ知っていれば
初心者の方は十分描くことが
出来るということですね。
是非水墨画に適した道具で
挑戦してみてください。
「こういうことか!!」と
より描くことが
楽しくなることでしょう。
そうなれば用語の持つ
意味合いも感覚的に
理解出来ることと思います。
ではそれぞれに分けて
みていきましょう。
[水墨画の技法]筆の持ち方の用語
筆を持つ機会が
ほとんどない現代です。
筆と鉛筆や筆ペンでは
持ち方も力の入れ方も
全く違います。
それでも基本の筆使いを
意識していれば、
手と筆が勝手に基本形を
取れるようになってきます。
なぜならそのほうが
断然楽に運筆出来るからです。
[水墨画の技法]単鈎法とは
「単鈎法たんこうほう」
親指と人差し指で
筆管を支え、中指と薬指で
支える持ち方。
細かく筆を動かすのに
良い持ち方です。
[水墨画の技法]双鈎法とは
「双鈎法そうこうほう」
親指、人差し指、中指ではさみ、
薬指で支える。
大きな画を描く時には
筆が安定する持ち方。
[水墨画の技法]腕の構え方用語
腕の構え方にもそれぞれ
適した方法があります。
[水墨画の技法]懸腕法とは
「懸腕法けんわんほう」
体から肘を離し、
筆を持った方の腕を
紙から離し紙と平行に
浮かせて描く方法。
大きな運筆が可能です。
[水墨画の技法]提腕法とは
「提腕法ていわんほう」
筆を持った方の手首を
机の上に軽くのせて描く方法。
細部や小品を描く時に
適している構え方です。
[水墨画の技法]枕腕法とは
「枕腕法ちんわんほう」
筆を持っている方の
手首の下に、空いている方の
手を添える構え方です。
小品や細部の描写の時に
安定する方法です。
[水墨画の技法]用筆とは
実際に描く際の筆遣いを
用筆と言います。
運筆(筆の運び方、動かし方)
とも言います。
直筆、側筆、逆筆が
基本の3つになります。
[水墨画の技法]直筆とは
穂先が筆の動く方向と
逆の方向に向きます。
穂先が線の中央を通るようにする方法
[水墨画の技法]側筆とは
筆を斜めに傾けて
筆の腹を使って描く方法。
傾けて描くことによって
濃淡が描けるので、
もっともよく使う用筆法
でもあります。
[水墨画の技法]逆筆とは
筆をやや斜めに倒し
押し出すように描く方法
[水墨画の技法]その他の用筆語
比較的よく使う用筆法が
次の二つです。
「擢筆てきひつ」
穂で紙を叩くようにして
点を打つ方法です。
花や点苔はこの方法。
「刷筆さっぴつ」
穂の腹を使って
こするように描きます。
動物の毛描き他は
この方法になります。
[水墨画の技法]用筆実践編
ここまでで言えることは、
筆は穂先だけを使うのではなく、
あらゆる部分を使って
描くことが出来る、ということです。
少し逸れますが、
100均の筆では穂先は
使えても水墨画の
多彩な筆遣いには
不向きであることは
ハッキリ言えそうですね。
それでは用筆の解説に沿って
実践で確認してみましょう。
[水墨画の技法]直筆とは
上の画像はすべて
直筆で描きました。
直筆とは
「穂先が筆の動く方向と
逆の方向に向き、穂先が線の中央を
通るようにする方法」です。
[水墨画の技法]側筆とは
側筆とは
「筆を斜めに傾けて
筆の腹を使って描く方法」
筆に墨の濃淡を含ませて
側筆で描くと
物の立体感他を一筆で
表現することが出来ます。
最も水墨画らしい表現で
よく使う用筆法です。
[水墨画の技法]逆筆とは
逆筆とは
「筆をやや斜めに倒し
押し出すように描く方法」
円を描いたり
花や葉っぱを描く時、
逆方向に筆を動かして
描く場合があります。
[水墨画の技法]用墨とは
姿勢、運筆がわかったところで
次に用墨について
解説したいと思います。
用墨とは、墨の扱い方です。
墨汁では美しいグラデーションは
望めませんので固形墨を
使って試してみてくださいね。
ここで考え方として
墨の濃淡を
彩色画と比較してみましょう。
水墨画で重要なのは
墨の濃さ(グラデーション)です。
この濃さの違いが
彩色画で言えば色の違いに
当たります。
グラデーションを駆使することで
物体の濃淡だけでなく、
軽重、明暗、深浅等が
表現出来ます。
[水墨画の技法]墨の濃淡
墨の濃淡は濃い薄いの
色の調節になります。
日本では「墨に五彩あり」とか
「墨に七彩あり」と言います。
中国では「五墨六彩」と言って
墨の濃淡を表現するそうです。
墨の濃淡には
次のような種類と名称が
あります。
「五墨」とは墨の
焦、濃、淡、干、湿で、
「六彩」とは
黒・白、干・湿、濃・淡の関係です。すなわち、
墨の濃さ(焦、濃、淡)、
水の分量(干・湿)、
明暗と色彩(黒・白)、の調和と対比により、
水墨画は構成されていることを
「五墨六彩」という言葉で
表現しているのです。《引用:「水墨画ハンドブック」より/馬 驍》
<濃淡を作る方法>
- 限界までの濃墨を作る
- ➀で磨った濃墨を
水で調節して必要な濃淡を作る - 水で調節するときは
筆に取った濃墨を絵皿で
振るように馴染ませる - 違った濃淡を表現したい時は
その都度、調墨しなおす
[水墨画の技法]墨の潤渇
墨の潤渇は水の多い少ないで、
にじみやぼかしを表現するか、
乾いて濃い表現をするかの
違いを生みます。
[水墨画の技法]用墨実践編
墨の五彩、六彩を参考に
実際に墨を作ってみましょう。
水墨画では濃墨より
淡墨を大切に表現します。
これらの墨の濃淡の変化を
効果的に表現出来たら・・・
素敵な作品がどんどん
生まれそうですよね。
[水墨画の技法]墨技と筆技
ここからは技法について
その用語とともに解説
していきたいと思います。
- 墨の魅せる技
- 筆を使った技
- 描き方
の3つに分けてみます。
用語名で難しく感じる場合は、
実際にどんな方法なのかを
筆と練習用の紙を使って
確認してみる方法を
オススメします。
用語がわからなくっても
自然と筆で表現出来ていた!
ってこともあります。
[水墨画の技法]墨技の種類
① 三墨法
② 破墨法
③ 撥墨法
④ 積墨法
⑤ たらし込み法
[水墨画の技法]筆技の種類
ア.減筆法
イ.先隈
ウ.元隈
エ.片隈
オ.両隈
カ.潤筆
キ.渇筆
ク.割り筆
それぞれの説明、実践法は
こちらの記事からもどうぞ
↓ ↓ ↓
[水墨画の技法]二大描法
(1) 鉤勒法
(2) 没骨法
[水墨画の技法]調墨とは
それぞれの墨技の前に
よく使う大切な用語で
調墨ちょうぼく があります。
これは一筆に墨の濃淡を
含ませることを言います。
どう含ませるか?
それが技になってきますね。
では墨技、筆技を一つずつ
みていきましょう。
[水墨画の技法]①三墨法とは
三墨法さんぼくほう
水墨画の基本中の基本で
もっとも水墨画らしい
技法なのが三墨法です。
三墨法とは
一筆の中に墨の
グラデーションを
作る方法のことです。
穂に濃墨、中墨、淡墨を
順番に含ませます。
含ませ方によって
グラデーションにも
変化が生まれ、
水墨画らしい墨色の
変化が楽しめます。
[水墨画の技法]②破墨法とは
破墨法はぼくほう
先に描いた墨線(墨面)に
後から濃さと水分量の違う
墨を重ねます。
墨の調子が変化します。
それによって
表情をつくる方法です。
ものの質感が表現出来ます。
[水墨画の技法]③撥墨法とは
撥墨法はつぼくほう
墨をそそいだり
撥ね散らかすなど
偶然性を期待した方法です。
出来た墨の形から
山や雲、岩の形に見立てて
描きだすことを言います。
水墨画ならではの
手法と言えます。
[水墨画の技法]④積墨法とは
積墨法せきぼくほう
墨を重ねる表現方法です。
薄墨を丁寧に重ねていきます。
何度も重ねることで
絵に厚みが出来て
ものの質感、立体感
奥行きが表現出来ます。
滲みの少ない紙が適しています。
[水墨画の技法]⑤たらし込みとは
たらし込み
俵屋宗達の創案で、
琳派絵師たちが用いた
代表的な描法です。
にじまない紙を使います。
濡らした紙が乾かないうちに
他の濃さの墨を置いて
にじませる“ぼかし”の技法です。
日本画ではよく使われます。
[水墨画の技法]ア.減筆法とは
減筆法げんぴつほう
少ない筆数で対象物を
描き出す方法です。
線の肥痩や強弱、
濃淡、速度の変化など
線や面の表情を
多彩にすることで、
その効果が増大します。
少し高度な技法ですが、
細かく描かないことで
表現するのが水墨画です。
技法の中ではよく使われる
方法でもあります。
[水墨画の技法]イ.先隈とは
先隈さきくま
穂の先端に濃墨をつけて描きます。
先を尖らせた先隈⇩
先を丸く入れた先隈⇩
[水墨画の技法]ウ.元隈とは
元隈もとくま
筆の根元に濃墨を
つけて描く方法です。
先隈とは逆の方法で、
穂の先端についた濃墨は
拭き取るか流してしまいます。
穂先の濃墨を洗ったあとは
水が滴るくらいに
含ませておくのがポイント。
[水墨画の技法]エ.片隈とは
片隈かたくま
三墨法を作るのと
同じ方法です。
筆の片側を濃くすることで
立体感や奥行きを
表現します。
[水墨画の技法]オ.両隈とは
両隈りょうぐま
筆跡の両側が濃墨になることで
対象物の輪郭を
強調して描く方法。
横から見た筆の状態
表と裏をぺたんこにするつもりで⇩
上からみた状態
この両サイドに濃墨をつける⇩
[水墨画の技法]カ.潤筆とは
潤筆じゅんぴつ
穂に含ませる水の量を多くして
ゆっくり運筆する方法
[水墨画の技法]キ.渇筆
渇筆かっぴつ
穂に含ませる水の量を
少なくして素早く運筆する
[水墨画の技法]ク.割り筆とは
割り筆わりふで
水量を少なめにして
穂先を捻ってバラバラにして
素早い運筆で表現します。
動物の毛描きや松葉などを
表現したいときに使います。
《破筆》とも言います。
[水墨画の技法](1)鉤勒法とは
鈎勒法こうろくほう
線描法とも言います。
輪郭線を描く方法で、
主に直筆を使って
線のみで表現します。
[水墨画の技法](2)没骨法とは
没骨法もっこつほう
付立法とも言います。
輪郭線を描かない方法です。
側筆が中心の描き方になります。
墨の濃淡、潤渇の変化で
対象の質感、量感を同時に
表現する方法です。
まとめ
いかがでしたか?
今回は水墨画の基本的な
用語を順にみていきました。
呼称は難しそうですが
実践すれば自然に形に
なっていることもあります。
「使いこなす」と考えると
なかなか先の長いお話になります。
少しずつお手本を観ながらでも
「この線、メッチャ上手くいった!!」
と自画自賛して
達成感を感じながら
進んでいってください。
用語に惑わされることなく
筆に任せてチャレンジして
みてくださいね。
2.効果的な技法の使い方
3.用語がわかれば実践!