こんにちは
水墨画家のCHIKAです。
「水墨画は色を使っちゃダメなんでしょ?」
と問われることが多々あります。
筆者の展示会の時も色を使うと
「水彩画で描かれたのですね!」
とコメントくださることがあります。
どう返事しようかな?
と思うことしばしばなんですが(^^;
そんな曖昧な水墨画と色の関係を
今回も歴史的なことにも触れながら
水墨画に使われる絵の具のいろいろを
ご紹介します。
この記事を読んでいただければ、
より迷わず効果的に色を
使っていただけることと思います。
目次
【水墨画】墨絵のくくり図
【水墨画】墨彩画との違い
水墨画は墨色の変化を大切にします。
つまり墨色のグラデーションが
色彩とイコールなのです。
墨色=色彩
「墨に五彩あり」とは
このことを意味します。
こちらの記事もどうぞ ⇩ ⇩ ⇩
【水墨画と墨彩画】表現の違い
水墨画は線の絵画とも言われています。
線一本を引くのにも
あらゆる筆法が存在します。
また墨色の変化を楽しむ芸術です。
そのことを考えると
さらに色を多用するのは
面白みが半減しやしないか??
あえて日本の水墨画と墨彩画を
区別しているのはそのことが
大きいように思います。
どちらも同じ技法を使って、
水墨画は墨色で表現
墨彩画は色彩で表現しています。
墨彩画家さんの中には
水彩絵の具を使われている方も
いらっしゃるようです。
水墨画家であり水彩画家でもある
作家さんも結構いらっしゃいます。
画材の違いはあれど、
どちらも水のコントロールによって
魅力ある表現が出来るジャンルです。
冒頭でも書きましたが、
筆者の彩色の作品を
鑑賞して下さった方からは、
「水彩画も描かれるんですね」
とコメントいただくことが
度々あります。
やはり日本人の水墨画のイメージは
黒と白、墨色一色で描かれたもの
というのが根強い観念のようです。
【水墨画と墨彩画】色を多用するかどうか
ジャンルを分けているがゆえに、
初心者や鑑賞者にとっては
区別が判然としないところですね。
どこからが水墨画で
どこからが墨彩画?
よく言われるのは半分以上、
色を多用する場合は墨彩画。
水墨画の公募展などでは、
“極力色は使わず墨色を
大切に表現するように”
と概要に明記されているのを
目にします。
明確な決め事があるわけでは
ありません。
【水墨画と墨彩画】墨色を活かす
墨の魅力に取りつかれて
墨色を極めようというのであれば、
水墨画で表現を!
墨も色も使って表現したい、
ということであれば
バランスの良い表現を!
どのように表現しようか?
それには彩色が必要か否か?
要は表現者の表現したい方法に
尽きるのではないでしょうか。
学習が進んで描けるものが
増えてきたらいろいろ
挑戦されることでしょう。
そんな時は思い出してください。
水墨画として描くのであれば、
◎墨色を活かすこと
◎色は淡彩で効果的に!
◎絵具は墨色と相性の良いものを
以上はチェックしておいたほうが
良いのではないでしょうか。
水墨作家さんの参考書には
「色を単色で使わないで
墨を加えて使うべき」と
書かれています。
それはあくまで墨が基調である
ということを示しています。
何百年、何千年と指示されて
続いてきたものにはそれだけの
魅力が詰まっていると思います。
温故知新
その古典を踏まえて
良い作品作りを目指したいですね。
【水墨画】山水画にも色はある
もともと水墨画は山水画を描く時の
一つの技法として生まれてきました。
そのため水墨画といえば
山水画のことを指していました。
このことについては
こちらの記事に書きました。⇩ ⇩ ⇩
そもそも山水画の成り立ちは、
中国人の持つ独特の世界観、
精神性が強く表現されています。
そのため時代の流れもあって、
着色が邪魔だったのかもしれません。
それでも全く着色されなかったか?
というとそうではなく、
全体的や部分的に着色されている
墨画をよく見かけます。
中国画はもともとは
色彩豊かなのも特徴の一つです。
「墨一色で」という
日本人が持つイメージは
次にご紹介する文人画
によるものと思います。
【水墨画】草花や野菜
宋時代になって水墨画が
盛んに描かれるようになります。
その末期には文人画家が登場し、
ひとつの大きな流れを作ります。
文人にとって精神性は
何よりも大事にされました。
それには墨色の清々しさが
一番表現しやすかったのでは
ないでしょうか?
その文人画家たちの画を
写意画と呼びます。
そして彼らが好んで
題材にしたのが花卉雑画。
墨一色で描かれた竹や梅、
身近な草花や野菜などです。
日本の水墨画教室では
この写意画の中の
花卉雑画から教わります。
昨今ではやや変化してきてますが、
難しく取られがちな水墨画の中でも
入りやすく描きやすい画題と
言えるでしょう。
そのため教室では色を極力抑えて
墨のグラデーションを
活かした作画を学びます。
【水墨画】絵具の種類
さてここからが絵の具のお話です。
主に次の種類がよく使われています。
①彩墨
②顔彩
③鉄鉢
④チューブ顔彩
日本画、水墨画、水彩画、イラスト他
幅広いジャンルに使われています。
【水墨画】絵具の種類/彩墨とは
彩墨とは色の固形墨のことです。
歴史は墨と同じくらい古いです。
顔料(無機、有機の配合)を
膠で固めたものです。
色目は日本の古代色を基調に
様々な色が作られています。
日本画の絵具の使われ方と同じですが、
固形墨のように固められていますので、
顔彩のように簡単には溶けません。
使い方は固形墨と全く一緒です。
硯で磨って使います。
色の墨を使う場合は色専用に
白い硯を用意したほうが良いです。
黒い硯だと色味が見にくいからです。
この彩墨はいったん摺り下ろせば
水彩のように淡色から重ね塗りや
混色も可能です。
乾けば耐水性があり、
表装で流れ落ちる心配もありません。
この彩墨を求められる場合は、
見た目と実際に紙に着色するのと
色に違いがあるようですので、
注意が必要です。
お店で塗ったサンプルが確認できれば
良いですね。
【水墨画】絵具の種類/顔彩とは
初心者が一番使いやすいのが
顔彩です。
水干絵具と接着剤(膠等)で
出来ています。
水干絵具は日本画で
よく使われる絵具で原料は土です。
固形ですが水に溶けやすく、
発色が良いのが特長です。
セットなら12色から求められます。
単品でももちろん買えますが、
少し割高になります。
混色も可能です。
厚塗りには向きません。
水墨画セット商品の中には
この顔彩が入っているのも
見かけます。
使い方としては、
水を含んだ筆を使って
好みの色を溶かしていく要領です。
絵具の扱いが難しい日本画でも
初心者の方用によく使われます。
とても扱いやすい絵具なので
絵手紙や水彩画やイラストなど、
様々な用途に使われています。
そのためでしょうか、
パステルトーンの色も
ラインナップされています。
【水墨画】絵具の種類/鉄鉢とは
顔彩は角型の陶器に流し入れたもの。
鉄鉢(てっぱち)は丸形の陶器に
流し入れたもの。
中身は顔彩と同じ水干絵具を
膠等で固めたものです。
一色ずつの大容量です。
また使った後は絵皿として
使えます。
【水墨画】絵具のひび割れ
顔彩の商品説明に
「まれにその性質上ひび割れが
起こる場合がありますが、
問題なく使っていただけます」
と記載されているものがあります。
どのようなものかというと、
下の画像のような状態です。
こちらは私物で古い年代のものです。
ここまででなくても
少しひび割れしても
全く問題なく使えます。
【水墨画】絵具の種類/チューブ顔彩とは
チューブ顔彩は文字通り、
チューブになった顔彩です。
中身は顔彩、鉄鉢同様に、
水干絵具と接着剤(膠が主)です。
チューブであるため
水彩絵の具のように手軽に使えます。
顔彩、鉄鉢同様に水性です。
【水墨画】色流れを防ぐ
これまでにご紹介した商品は
水性であり膠の調節がされてます。
作品を表装する場合は
必ず膠を足して着色するか、
作品が完成したら、
防水スプレーを使用して
色流れを防ぎましょう。
お店で表装をお願いする時は、
同じ紙と絵具で着色された
練習紙を一緒に渡して
試してもらいましょう。
練習紙を忘れた場合は、
どんな絵具を使ったかを
伝えておくとお店側で
処置してもらえます。
大事な作品を無駄にしないよう
ここはしっかり伝えて
出来上がりを楽しみに
したいですね。
【水墨画】絵具の種類/中国製絵具
中国製チューブ絵具も人気があります。
日本でよく販売されているのが、
馬利顔料です。歴史も長いです。
天然鉱物で作られています。
◎発色が良い
◎着色後の色落ちがない
◎墨との相性が良い
など日本の水墨画家さんにも
愛されている絵具です。
色の中には日本に馴染みのない
中国らしい色合いもあります。
チューブ型なので使いやすく、
水彩画や日本画など幅広く
使用されています。
チューブ容器については
破れたり蓋が締まりにくく
なったり等々あります。
画像は私物の絵具ですが、
チューブの口から以外に
漏れ出てしまった色があります。
ご使用の際にはうっかり
作品に付かないよう
注意が必要です。
新品のうちから別容器で
保管される方もいらっしゃいます。
もう一つ、
筆者の表装時の体験です。
馬利顔料の原材料が
はっきりしないという理由で、
作品を裏打ちする前に
試しても良い練習用の
着色された作品を
求められました。
練習用で色が流れ落ちないか等を
確認したいということでした。
もちろん色落ちせずに
綺麗に表装されましたので、
問題なく使っております。
【水墨画】紀州墨“彩煙墨”
貴重な赤松を使って、
これまた貴重な松煙墨を作られている
日本でただお一人の職人が
いらっしゃいます。
墨工房 紀州松煙代表
堀池雅夫さんです。
こちらでもご紹介しております⇩⇩⇩
先日、個展をされている
ギャラリーにお邪魔して
拝見してきました。
堀池さんの“彩煙墨”は
鮮やかなパステルトーンのものと
色を抑えた渋めの色目がありました。
混色がとても綺麗で
素材を選ばず描けるそうです。
筆者がお邪魔した日は
ワークショップ終了後でしたが、
“彩煙墨”の魅力を実演付きで
解説してくださいました。
墨工房 紀州松煙
堀池さんの柔らかいお人柄が
作られる墨にもしっかり表れて
いるようです。
【水墨画】メディウムが決め手
ここで絵具の種類のおさらいを
しておきましょう。
「一作品に一メディウム」と
画材を求めるときにアドバイスを
もらった記憶があるのですが、
現代水墨画の世界でも
墨だけではない
ミクストメディアの作品も
どんどん登場してきています。
メディウムを少しでも
知っておくことで
新たな作品の参考になるかも
しれません。
【水墨画】絵具は何で出来てる?
絵具は何で出来ているかというと
顔料+メディウム(糊材)です。
顔料は鉱物であったり土であったり、
有機、無機、天然、合成顔料
があります。
この顔料を何で混ぜるか?
ということでいろいろな種類の
絵具が作られています。
【水墨画】メディウムの種類
メディウムには大きく分けて
水性系と油性系があります。
上記に挙げた彩墨、顔彩、鉄鉢、
チューブ顔料はすべて水性です。
主なメディウムは膠にかわです。
最後にご紹介した
中国顔料のメディウムは
記載が見当たらないのですが、
色落ちしないところをみると
油性ではないかと思われます。
ある販売サイトでは
「油彩」とありました。
ご存知の方がいらしゃいましたら、
ご教授いただければ幸いです。
・水彩画:アラビアゴム
・油彩画:乾性油
・アクリル画:アクリルエマルジョン
【水墨画】思いをキャプションで
キャプションはすでに
ご存知だと思います。
こちらの記事もどうぞ⇩ ⇩ ⇩
キャプションは題名や作者の他に、
作品の説明文を書きます。
・紙本淡彩⇒ 紙に淡く彩色
・墨画淡彩⇒ 墨画に部分的彩色 etc.
作品発表の際には
是非キャプションにて、
作品への思いを鑑賞者に向けて
紹介しましょう。
描き手と鑑賞者を結ぶ
大切な役目を担っているので、
思いを込めたいところです。
まとめ
いかがでしたか?
今回は色を使いたい時の
絵具選びについて書いてみました。
2.色も効果的に活用しよう
3.絵具の選び方、注意点
筆者は日本製の水性顔料も
色目が好きでよく使ってます。
絵具の名前を聴くだけで
なんだかロマンを感じてしまいます。
中国顔料も色落ちの心配が
いらないのと発色や重ね塗りが
出来るので作品によっては
使ってます。
日頃の練習や作品作りに
役立てていただければと思います。
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