こんにちは
水墨画作家のCHIKAです。
“四君子”という名前を
ご存知ですか?
水墨画の教室や教本には
必ずといっていいほど
お手本として登場します。
四君子とは
竹、梅、菊、蘭 のことです。
これがなかなか手ごわい
お手本なのです(笑)
特に初心者にとっては。
あなたは上手く描けましたか?
聞くところによると
ある教室では1年中
四君子だけを
練習しているそうです。
ちょっとめげそうな
お話ではありますね。
さて今回は
四君子は初心者にとって
お手本になるのか?否か?
を見ていこうと思います。
そして出来るだけ
描きやすい?(努力してます(汗))
構図のお手本で、
四君子を描く時のポイントを
書いてみたいと思います。
目次
【水墨画】四君子とは何?
四君子とは“草花の君子”
四君子とは
竹、梅、菊、蘭 のことでしたね。
それぞれ「草花の君子である」として
称えられていました。
中国の文人たちは
みな君子を目指しました。
君子とは
“徳が高い人格者”を言います。
この4種類の植物の特長が
君子の持つ特性と同じである。
ということから
画題に選ばれています。
特に水墨で描かれた蘭、竹、梅は、
墨蘭、墨竹、墨梅と呼ばれ、
北宋時代の文人が始めたものと
言われています。
【水墨画】四君子/それぞれの特長
草花に例えられた
君子の特長とは
どのようなものだったでしょう
梅(冬)
春まだ浅い雪の中で
百花に先駆けて
花を咲かせる。
孤高で強い精神を備えている。
蘭(春)
楚々とした気品の中に
も風格があり、
ほのかで清らかな香りは
心を浄化する
と言われている。
竹(夏)
真っ直ぐ曲がらずに成長し、
寒い冬でも青々としている。
幹の空洞は“謙虚”“無欲”
である君子の節操に
例えられている。
菊(秋)
百花が咲き終わり、
寒さが増してくる晩秋に
鮮やかで華麗に花を咲かせる。
また優雅な香りで魅了する。
中国では目出度いものを
重ねたり、多種類のものを
組み合わせたりして
さらに吉祥を願う習わしが
あります。
四君子もそのひとつです。
【水墨画】四君子に始まり終わる
水墨画を学び始めると
まずお手本となる
四君子ですが、
初心者の時だけの手本
ではありません。
描法の基本として
沢山の学びがあります。
それゆえ、
「基本に帰れ」
ではないですが、
技術が向上しても
常に学び続けられる
手本中の手本となる
重要な画題です。
見方を変えれば
運筆の練習をしながら
作品のように描ける画題
でもあります。
例えば日頃の練習の成果を
披露するのに色紙に
描いてみては
いかがでしょう?
即興的にササッと
梅の花や竹を描けば
お部屋に飾れます。
絵手紙のように
描ければ良いですね。
【水墨画】お手本になる理由とは?
書を学ぶときは
「永字八法」を大切にします。
永字八法とは
漢字の『永』の字に
書に必要な8種の技法が
すべて含まれていることです。
それと同じく
画を学ぶ者は四君子を
描くことによって
基本的な筆遣いを学べる
ということです。
【水墨画】四君子を描く前に
確かに“四君子”は
水墨画を学ぶ者にとって
大切なお手本ですが、
一朝一夕に習得は
難しい画題です。
それぞれのどこが
どのようにお手本に
なるのか?
それがポイントと
なるのですから、
まずは筆運び、
調墨、を確かめて、
お手本通りに
描いてみましょう。
お手本以外に
自分のスケッチや写真など
気に入ったものから
描いていく場合は
描きやすくするために、
描きたい部分、省きたい部分を
ソフトや手描きのスケッチで
下書きしておきましょう。
とにかく最初は
単純で描きやすい構図から
始めましょう。
【水墨画】四君子を描く/梅編
いろいろな描き方があります。
細かく言えば、花びらひとつも
さまざまな描き方があります。
線描法、没骨法、指頭法 などなど。
この記事では
①花びらと蕾を線描で描く
②幹を側筆で描く
③枝を直筆で描く
の順番と描法で
描いていきます。
まずは各パーツごとに
描いていきましょう。
【水墨画】梅の花びらと蕾を描く
梅の花を線描で描く
花びらは線描で描きます。
◎正面、横向き、後向き
正面向きの花びらは
矢印の方向に筆を進めます。
花びらの丸さを出せれば
OKなので、描き順は一例です。
横向きの花びらは
後向きの花びらは
ガクを濃墨でしっかり描きます。
しべの描き方
◎蕾のガクの入れ方
プクッとふくれた梅の蕾は
とてもかわいいですね。
ガクと共に所々に入れると
良いアクセントになります。
ガクは濃墨で調子よく描きます。
◎最後にしべの部分に
薄墨を置くように入れます。
色づいているような
香りがしそうな、
良い感じになります。
【水墨画】梅の幹を描く
幹は側筆で潤筆を使います。
筆は三墨法で調墨する。
左から右に側筆で筆を進める。
筆は三墨法で調墨する。
濃墨が幹の上側にくる。
右から左に側筆で筆を進める。
側筆
筆を倒して穂をずらすように進める
潤筆
筆に水の量を多く含ませます。
調節しながら調墨します。
調墨(三墨法)
筆に淡墨を含ませる。
筆の1/3ほどに中墨を含ませる。
穂先に濃墨を少し付ける。
少々かすれ気味でも良いです。
水分を含んだ筆を
動かす場合は、
あまりゆっくりだと
にじみが広がってしまって
形が定まらなくなります。
調墨(三墨法)については
慣れればあとは練習あるのみ。
経験しかありません。
上手く描けた感触を忘れず
何度でも調子を変えて
描いてみましょう。
【水墨画】梅の枝を描く
枝は直筆で描きます。
直筆
筆を立てて線を描くように。
穂先が墨線の中央を通る。
ほんのわずかに
押さえるようにします。
枝先は丸くなっていますね。
尖ってはいないので注意です。
筆勢は必要ですが、
勢い過ぎて先が尖がると
枝らしくなりません。
【水墨画】点苔や新芽を描く
点苔や芽を加えます。
濃墨で、穂先で紙を軽く
突くように加えます。
点苔(てんたい)とは
点苔法と呼ばれる
東洋画の技法のひとつで、
もともとは写実的で、
樹木や山石に付いた
苔を表現するものでした。
だんだん形式化され、
水墨画ならではの省略法として
画面に動きを与える
役目も担ってます。
【水墨画】梅の画を描いてみる
パート練習が終わったら
それぞれを組み合わせて
描いてみましょう。
アタリ(下書き)を
とってもよいでしょう。
描く順番は(この記事では)
幹→枝→点苔→花→しべ→ガク です。
続けて書きます。
幹が乾ききらない間に
枝を加えます。
幹と枝の間に隙間が
出来ないように、
上手く滲んで馴染むようにします。
点苔も幹と枝の
乾ききらない間に
調子よく置いていきます。
調子よすぎて
うるさくならないように
しましょう。
花の入る部分を空けて
枝を描きました。
その部分に花を描いて
いきましょう。
花と枝は離れていても
構いません。
かえって離れている方が
見栄えが良いです。
小さすぎず
沢山すぎずに
描き入れましょう。
蕾も良い所に
描き入れます。
最後にガクを描きます。
濃墨の点でアクセントに
なります。
心持ち、リズムよく
描き入れると
画に締まりが生まれます。
【水墨画】四君子を描く/春蘭編
春蘭を描きます。
4つの中でも
簡単そうでなかなか
格好をとるのが難しい画題です。
描き順としては(この記事では)
① 葉っぱ
② 花と花茎
③ 花芯
の順で描いていきます。
【水墨画】春蘭の葉っぱを描く
のびやかに描きたいので、
懸腕法を使います。
肘を浮かし、紙面と
平行に構えます。
<葉っぱのポイント>
あまり葉っぱが
密集しないように。
葉の表裏がひっくり返ったり
葉っぱの濃淡、長短、肥痩 などで
動きを表現します。
自然のままに描いて
かっこよく収まれば
良いですが、
これがなかなか
さまになるには時間が
かかるでしょう。
中国の古い画法には
描き順とその形が
記されています。
三筆破鳳眼 他
まずは古法の形を
練習してみましょう。
お手本を描くことは
上達する為の
近道の一つです。
【水墨画】春蘭の花と花茎を描く
<花のポイント>
花は満開か半開きかで
向き方が違います。
花の数を奇数で
まとめてみましょう。
筆に淡墨を含ませ、
穂先にやや濃墨をつけます。
濃墨をつけた側を
上にして
置くようにして
一気に描きます。
花びらの立体感と
動きを出したいので、
調墨は大切です。
花びら一枚一枚が
真っ黒にならないよう
調墨の時に確認しましょう。
<花茎のポイント>
花茎は薄い膜状の鱗片に
ゆるく包まれています。
その感じを出すため、
花よりも薄めの
淡墨を筆に含ませ、
穂先に中墨を付ける。
花のすぐ下から
順に筆を下ろして描きます。
【水墨画】春蘭の花芯を描く
<花芯のポイント>
花芯はその形が
“心”に似ているため、
点心と呼ばれ、
濃墨で草書の“心”
という字を書くように
入れます。
【水墨画】春蘭の画を描く
描き順は
① 葉っぱ
② 花と花茎
③ 花芯
で描いていきましょう。
<春蘭の全体のポイント>
蘭は葉が主になります。
葉っぱを描いたあとに
花と花茎を描き入れます。
野生の春蘭の花は
一本の茎に一つです。
画に変化をつけるためにも
花数は工夫して
描いてみましょう。
なかなか思うように
描けないのが普通です。
ボチボチ、運筆の練習と
思って描いていきましょう。
【水墨画】四君子を描く/竹編
四君子で表される竹は
青々とした夏の設定ですが、
天候や季節の変化、
竹の種類の違いなどで
描き方が変わります。
この記事では
オーソドックスな描き方で
竹の葉っぱ、枝、竹筒を
それぞれ描いてみましょう。
【水墨画】竹の葉っぱを描く
竹の葉っぱ/一枚づつ描く
最初は直筆で筆を立てて
描いていきます。
慣れてきたら
やや側筆で描いていきます。
最初は上から下へ
(なかなか難しいです)
竹の葉っぱの形や長さを
想像して描きます。
始点は軽く
途中の膨らみで
少し力を入れて
終点は力を抜く
抜く時に穂先が
まとまって
細い線となるように、
手首、腕だけでなく、
指先も動かします。
上下だけでなく
横向き、斜め、
下から上へ と
調墨した筆を
自由に使って
竹の葉っぱらしく
なるまで練習します。
竹の葉っぱ/これは避けよう
こんな形は避けましょう。
形が取れるまでには
時間がかかります。
少しずつ
竹の葉っぱに
近づけていきましょう。
竹の葉っぱ/組み合わせて描く
一枚一枚が練習出来たら、
向きを考えて
組合せて描いてみましょう。
枝との組み合わせも
描いてみましょう。
【水墨画】竹の枝を描く
線描で描いていきます。
細い枝ですが、
節と節の間で
曲がることはありません。
竹の枝は節から
2本ずつ出ています。
そして必ず次の節からは
前の枝の180度逆方向に
枝を伸ばします。
実際に竹を観察しても
意外と見落としてしまう箇所ですが、
ハッキリわかる特徴なので
枝までしっかり描く時は
注意したいポイントです。
【水墨画】竹筒を描く
竹筒を筆で描く場合
側筆で描きます。
節ごとに下から上に
運筆します。
始点で押さえながら上へ、
終点で一旦押さえて
戻るように手前に引く
節の部分を空けて
次の筒を下から上へ
載せていくように描きます。
竹筒も節と節の間で
曲がることは絶対に
ありませんので、
注意しましょう。
なるべく墨継ぎをせず、
擦れても良いので
一気に描きましょう。
少し竹筒が乾いた時点で
空けておいたところに
節を濃墨でしっかり
描き入れます。
竹筒を描くと
調墨と側筆の良い練習に
なります。
ポイントを押さえて
練習していきましょう。
竹筒を平筆で描く場合
平筆の幅が竹筒の幅になります。
調墨は薄墨を全体に含ませ、
片方の端に濃墨を付けます。
下から上、上から下、
始点と終点をしっかり
押さえることで
竹筒らしさを出します。
平筆は水の含みが
筆よりも少ないので、
その都度、必要に応じて
墨継ぎします。
少し竹筒が乾いた時点で
空けておいたところに
節を濃墨でしっかり
描き入れます。
【水墨画】竹を描く
葉っぱ、枝、竹筒を
組合せて一本の竹を
描いてみましょう。
いつも考えるのは
①どんな構図にするのか
②どこを強調したいか
③メリハリよく濃淡をつける です。
練習していく中で、
いつでも描ける
パターンを作るのも良いですね。
それを組み合わせたら
作品になります。
【水墨画】四君子を描く/菊編
菊なら豪華な大輪を
描きたいところですが、
この記事では可憐に
小菊や野菊を練習しましょう。
【水墨画】菊の花を描く
線描で花びらを描きます。
出来るだけ
にじみの少ない紙で
描いてみましょう。
①花の輪郭を楕円形にアタリます。
②円の中央、やや上に管状花
③四方向に花びらを描く
④隙間を埋めるように
花びらを重ねる
いろんな角度から
描けるように
練習してみましょう。
パターンを作って
作品に活かしましょう。
【水墨画】菊の葉を描く
まずは没骨法、側筆で
描きます。
しっかり菊の葉を観察し、
描く時は出来るだけ
早い運筆を心掛けて
簡略化で描きます。
滲みの少ない紙なので
少々渇筆気味に
なると思います。
少し乾いた時点で
葉脈を入れます。
【水墨画】菊を描く
花、葉っぱ、蕾、茎
の順で描いていきましょう。
<ポイント>
バランスが良いのは
花を奇数にして
配置を考える。
花の間に葉を描く。
葉っぱも濃淡を使って
メリハリをつける。
花の上方に
伸び上がるように
蕾を描きます。
【水墨画】芥子園画伝という絵手本
『芥子園画伝』かいしえんがでん
中国の清時代に刊行された絵手本です。
古くからの画論や技法を解説し、
絵画の教科書として広く読まれました。
清の乾隆帝の時代には
一級品のほとんどが
秘蔵品となってしまったため、
『芥子園画伝』の中に
一級品の取扱いがないにも
かかわらず、広く
受け入れられていきました。
日本でも江戸後期の
文人画家、南画家に
大変影響を与えました。
この画手本の中にも
蘭譜
竹譜
梅譜
菊譜
と四君子の描き方が
載せられています。
こちらの本はQRコード付きで、
お手本の描き方を
動画で観ることが出来ます。
【水墨画】四君子を描いて思うこと
いかがですか?
なかなか容易には
描けそうにありませんが、
私の場合、
サラッと描ける
単純なパターンを
自分なりに見つけて
描けるようにしようと
思ってます。
実際にどう見えるか、ではなく
どう描けば画が生きるか・・・
を意識してみましょう。
【水墨画】主役、脇役に
古画を鑑賞すると
絶妙な配置で
しかもさりげなく、
梅や竹が背景に
描かれています。
このサラッと描くことが
難しいのですが、
背景を作るのに
とても効果を
発揮することがあります。
是非、主役・脇役に
描いてみましょう。
まとめ
四君子は初心者にとって
お手本になるのか?否か?
全くの初心者にとっては
難しい画題だと思います。
ですが、見方を変えれば
「どのように自然の草花を
画にしていくのか」
を学ぶのにはこれほど
最適な教材はないのでは
と思います。
2.竹、梅、菊、蘭のポイントを 掴んで練習する。
3.竹、梅、菊、蘭をいつでも描ける パターンにして作品に活かす。