【水墨画の構図】基本パターンと名画から考える構図のポイント

こんにちは
水墨画家のCHIKAです。

絵を製作する段階で
ひと悩みするのが構図です。

皆さんはいかがでしょうか?

いくつかの構図に関する
参考本に目を通して見ました。

そこでは基本のパターンを
知ることが構図づくりに
役立つことが書かれています。

これは初心者にとっては
わかりやすく嬉しいですね。

今や水墨画も
西洋画のような
絵画化が主流です。

基本のパターンを確認し、
名画も参考にしながら
構図を見ていこうと思います。

是非、日頃のお稽古や
作品作りで試みて
いただければと思います。

目次

【水墨画の構図】構図とは


まず構図とは何でしょう?

絵画や写真などで、
主張したいモチーフを
うまく配置して
まとまった全体を
作り上げること

と辞書にはあります。

【水墨画の構図】準備


構図を考える前に
考えておきたいことがあります。

【水墨画の構図】➀モチーフ選び

初心者の場合、
一つの画面に
描きたいものが
いくつかあっても、
ぐっと我慢して
なるべく単純に
一つ二つに絞ります。

【水墨画の構図】②表現方法

  • 動きを感じさせる
  • 静けさを感じさせる
  • 温かさを感じさせる
  • 孤独を感じさせる   等々

➀が決まったら
全体的にどんな雰囲気
出したいか考えます。

➀⓶をだいたい
頭の中で考えておきます。

そして構図を考えます。

【水墨画の構図】③配置

  • 主役脇役をはっきりさせる
  • 余白をどこに空けるか
  • 濃淡でメリハリをつける
  • 遠近で奥行きを表現する
  • 省略と強調

モチーフをどのように
四角の画面に配置して
収めるかを考えます。

【水墨画の構図】本画までの工夫

ここまでをザックリと頭の中で
組み立てますが、それだけで
いきなり描くのは不安ですよね。

ここでは以下の方法を
ご紹介したいと思います。

【水墨画の構図】Ⓐ鉛筆描き


スケッチ帖などに
鉛筆描きして構図を確認します。

墨で描くとどうなるか?
濃淡の使い方他考えて
進めましょう。

【水墨画の構図】Ⓑ別描き

描きたいモチーフを
和紙に描きます。

それを切り取り、
別の和紙に置いて
バランス他構図を
考えていきます。

【水墨画の構図】ⒶとⒷ

Ⓐ鉛筆書きしたものを
全体像としてⒷ別描きで
実際に近い構図を
作っていきます。

【水墨画の構図】単純に


水墨画の場合、
水を操る絵画です。

せっかく構図を考えたけど
思うように収まって
くれなかった。

初心者の時は特に
そのような場合が
ほとんどです。

なかなかバランスよく
収めるにはやっぱり
時間が必要です。

なるべく単純に単純にを意識して、
絞ったモチーフを
最大限効果的に見せる構図を
考えていきましょう。

欲張った構図よりも
単純明快なほうが
面白いし目を引きやすいです。

これを繰り返しながら
少しずつ複雑な画面に
挑戦していくと良いと思います。

【水墨画の構図】基本パターン


まず日本絵画というより
西洋絵画や写真に使われる
構図の基本的パターンを
ご紹介します。

【水墨画の構図】三分割法


画面を縦横それぞれ
三分割します。

その交わった点に
モチーフを配置する
構図としては安定感のある
基本的な方法です。

【水墨画の構図】二分割法

画面の縦か横かに
一本線を入れ、
真っ二つに分割する方法です。

よくわかる表現として
海と空の水平線や
地面と空の地平線に
使われます。

【水墨画の構図】日の丸

写真ではよく見る構図です。

モチーフをど真ん中に置いて
強調する構図です。

水墨画の場合、
背景を工夫すれば
面白い表現が出来そうです。

【水墨画の構図】対角線


モチーフを対角線上に
配置することを
意識した方法です。

奥行きや流れを
作りやすい構図です。

これに三分割や二分割を
組み合わせると
よりわかりやすい
配置にすることが出来ます。

【水墨画の構図】消失点


遠近感を出すために
よく使われる構図です。

『透視図法』と呼ばれるもので、
消失点を設定した遠近法です。

もともと東洋画、
特に日本の絵画に
遠近法はありませんでしたが、
西洋画的な絵画としての
表現には欠かせない
構図ではあります。

これも他の構図と
組み合わせることで
よりバランスの良い
水墨画ならではの
風景画等が可能になります。

【水墨画の構図】空気遠近法


遠近法のもう一つの概念である
『空気遠近法』です。

こちらは遠くのものほど
霞んで見えるという見方で、
特に水墨画はこの手法と
言えそうです。

ルネッサンス期の絵画も
この手法で描かれています。

“色彩遠近法”は
『空気遠近法』の一部の手法で
上記、空気遠近法と
同じではありません。

【水墨画の構図】三角構図


画面の中で
モチーフが三角形状に
配置されている構図です。

安定感があります。

【水墨画の構図】S字構図


川の蛇行や山並みなど、
風景をS字やC字に
流れを作った構図です。

雄大な景色の広がりや
奥行きのある画面作りが
可能です。

【水墨画の構図】俯瞰


鳥の目で上から
見下ろした構図です。

広がりを感じさせる
表現方法です。

【水墨画の構図】仰望


下から仰ぎ見る構図です。

三角構図と組み合わせれば
重厚感や荘厳な感じも
表現可能です。

【水墨画の構図】左右

モチーフを挟むように
木々や建物などを
左右に配置して
強調する構図です。

あるいは左右どちらかに
重点的に配置して
全体的なバランスを
とった表現方法です。

【水墨画の構図】三遠法

「早春図」郭煕(北宋)

水墨画、山水画は
中国が発祥です。
中国山水画では
どのような構図の取り方を
しているのでしょう?

平遠法、高遠法、深遠法で
三遠法と呼ばれています。

独特の遠近法で、
視点が移動して
描かれています。

平遠とは
平らな方向に距離があること
前山から後山を眺望

高遠とは
高い方向に距離があること
見上げる構図

深遠とは
深い方向に距離があること
背後をのぞき込む構図

三遠は画中で
適当に組み合わせて
用いられたということと
定説がないということで
容易に理解は難しい
構図と言われています。

【水墨画の構図】四季山水

引用:ウィキペディアより /周文 山水画

中国山水画に比べて
日本の山水画はどうでしょう

はじまりは中国山水画を
真似て学んでましたが、
日本の風土に合わせて
より四季を大切にした
装飾的な山水画に
なっていきました。

山水画の技法を
取り入れながらも
「山」自体に重点を置くような
複雑な構図は少なく、
より情景がわかりやすく
描かれています。

縦長画面なので、
墨の濃淡、余白、省略を
上手く組み合わせて
遠近、高低、深浅を
表現しています。

【水墨画の構図】補助線の活用

では初心者にとって
より簡単に構図を
図れる方法には
どのようなものが
あるでしょうか?

書道で使われる
方法を見てみます。

書画一致の考えで
絵画の場合にも
補助線を引くことで
モチーフのバランスを
考えることが容易になります。

【水墨画の構図】米字格


書道ではこの米字格
使うことによって
中心点を意識し、
点画のバランスと
余白を整えることを学びます。

それを画に応用しましょう。

中心と対角線を意識して
モチーフを置いていきます。

【水墨画の構図】マット

米字格を用いるときは
水墨画用の下敷き用
フェルトマットを
使用してみましょう。

F4からF10までの
使いやすい大きさで
フェルトに罫線が
入っています。

小さな画面を使って
構図づくりに慣れるには
良い方法だと思います。

水墨画用罫入り下敷

引用:楽天市場/水墨画用罫入り下敷

【水墨画の構図】条幅画面


山水画のような
画面を作るときは、
条幅を使います。

条幅とは縦に長い紙で
半切の大きさのことを指します。

この画面作りのポイントは
部分を描いて全体を
想像させること

画面に収めようと考えず、
強調するところや
余白の取り方で、
広がりを感じさせること

これらを意識して
作っていきましょう。

今では床の間のある
お家は珍しくなりました。

触れる機会があれば
構図の学習のためにも
作品鑑賞をお勧めします。

【水墨画の構図】変形画面


矩形以外にも
様々な画面があります。

【水墨画の構図】色紙

正式名称は“大色紙”
大きさは242×273㎝

特別な描き方は
ありませんが、
教室でははじめに
色紙を使って
花鳥画や風景画を
描かれるところも
あるようです。

【水墨画の構図】扇面

文字通り扇の形をした
紙面のことです。

矩形と違って
制約が多いのですが、
古くから扇面画は多く、
画面の工夫次第で
面白い画面が作れます。

【水墨画の構図】円窓


円窓画ともいわれ、
文字通り円い画面です。

扇面と同じく
制約が多い画面です。

装飾的で東洋でも
西洋でも古くから
天井画や絵皿、壁面画などで
使われている構図です。

【水墨画の構図】短冊


並幅で6×36㎝

短冊も長細く
限られた画面です。

きっちりと収まるよりは
大胆にはみ出して
広がりを見せるというのも
面白いものです。

いくつかの短冊で
一つの作品にするのも
面白いですね。

【水墨画の構図】名画で観る


このブログでは
毎回のように
お勧めしているのが
名画鑑賞です。

創作する心構えで
名画鑑賞すると
より学びが早いと思います。

ここでご紹介するのは
筆者の好みの名画に
偏ってしまいそうですが。

「これだ!」という
名画に出会えたら
創作もさらに楽しく
進むこと間違いなしです。

【水墨画の構図】秋冬山水図

秋冬山水図 “秋景” 雪舟筆
秋冬山水図 “冬景図” 雪舟筆

雪舟の『秋冬山水図』
国宝・室町時代

“秋景図”と“冬景図”の2幅
各47.7×30.2 ㎝

どちらも太く力強い線で描かれ、
安定感のある構図です。

手前から折れ曲がりながら
奥に向けて進んでいく構図で、
奥行きを感じさせようとする
意図的なものも感じさせます。

“秋景図”では
ほぼ中央奥に楼閣が見え、
その向こうには薄っすらと
険しい山々が見えます。

“冬景図”では
人物が険しい岩場を
登りながら楼閣を
目指しています。

途中の断壁がいっそう
険しさを感じさせる
ものになっています。

【水墨画の構図】蓮池水禽図

蓮池水禽図 宗達/京都国立博物館蔵 ウィキペディア

俵屋宗達の『蓮池水禽図』
国宝・江戸時代
116.0×50.0cm

宗達独特の柔らかい水墨画

紙面の上半分に蓮の花と葉を
下半分に水鳥2羽を配置。

あっさりした構図ですが
静けさの中にカイツブリの
たてる水音が聞こえてきそうな
想像を掻き立てる
広がりを感じさせます。

【水墨画の構図】天台山石橋図

天台山石橋図 蕭白 メトロポリタン美術館蔵 ウィキペディア

曽我蕭白の『天台山石橋図』
114×50.8㎝

母獅子が子を谷底へ
突き落として試す
中国の故事からとったもの

谷底に落とされた
子獅子の目線で、
母獅子のいる崖と
さらにはるか彼方の
石橋を仰ぎ見る構図です。

画の真ん中あたりに
湧きたつ雲を描き、
その上に切り立つ
絶壁のような山々で
囲むように描かれて
面白い構図になっています。

【水墨画の構図】秋茄子

秋茄子 速水御舟 山種美術館蔵 ウィキペディア

速水御舟の『秋茄子』淡彩
42.9×49.1㎝

葉っぱに僅かに
彩色が施されて
とても品のいい作品です。

ほぼ画面の中心に
形よくまとめられてますが、
葉っぱは四方に
延びようとする
広がりを感じさせます。

ちょこんと下方に
描かれた秋茄子も
その重みさえ感じられます。

【水墨画の構図】宮島八景図

宮島八景図(1帖8図のうち) 重要文化財 文化庁保管  ウィキペディア

長澤芦雪の『宮島八景図』画帖
一帖うち8面
34.0×47.0㎝

対角線上に宮島と
厳島神社が描かれ、
もう一方の対角線上に
鳥居が重なって
線の交わった中心に
本殿が配置されています。

意表をつくような
大胆奔放な画風の
芦雪にしては、
真面目な山水画で
神聖な表現をしています。

【水墨画の構図】晩鴉

晩鴉/竹内栖鳳 山種美術館蔵

竹内栖鳳の『晩鴉』
58.6×68.1㎝

夕暮れ時の風景
林の中に川が流れて
舟からでも見ているような
視点で描かれています。

主役の鴉は左端に
小さく描かれています。
そこから対角線を引くと
橋と農家の藁ぶき屋根が
重なります。

川の流れから手前から
奥へと湾曲して
吸い込まれるような構図です。

墨の濃淡の使い方が面白く、
幻想的な栖鳳の水墨画です。

【水墨画の構図】二日月

二日月/川合玉堂 ウィキペディア

川合玉堂の『二日月』
86.4cm×139.0cm
絹本墨画淡彩

二日月が登った夕暮れ時、
横長の画面に
緩やかな山の連なりで
画面を空と地面に
二分しています。

曲がりくねった浅い川が
山の方から画面下へと
流れています。
川音が聞こえそうです。

馬と共に農作業を終えた
農夫たちが家路につく様子を
抒情的に描いています。

【水墨画の構図】六柿图

六柿图 /牧谿 ウィキペディア

牧谿の『六柿图』
中国 宋末元初

6個の柿が画面下
1/3の所に並んでいます。
左から3つ目が
下にはみ出しています。

リズムを感じさせますね。

眺めていると
それぞれの形に
違いがあって
なぜかくすっと笑えそうな
ユニークな画です。

牧谿といえば
本国より日本で
人気のある水墨画家です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

構図構成はプロでも難しいと
言われています。
私も毎回のごとく
悩まされています。

少しずつパターンを覚え
名画で目を鍛えて
作画していきましょう。

1. 構図の基本パターンを知る
1. 名画で構図を学ぶ

2 件のコメント

  • 定年後
    山の絵をスケッチしたいです思ってました
    剣道とか体育会系の趣味ばかりなので
    参考になります

    • 松本様
      今回もコメントをありがとうございます。山の絵、是非墨でも描いていただきたいですね! 少しでもご参考になれば幸いです。

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    ABOUT US

    はじめまして 水墨画作家のCHIKAです。水墨画を独学で学んだ経験を活かし、全くの独学でも楽しめる方法を日々trial and errorで実践中。“変化・継承する素晴らしさを自然から学びたい”思いで里山暮らしを体験中。野鳥好き・猫好き。アクリル画にも挑戦中。京都生まれ